『複式簿記』とは何かを知るためには、まず『勘定』 『勘定項目』と言う言葉を知り、これによって定義される『単式簿記』 『複式簿記』 の違いを知ることが良いと思われる。
以下に、『勘定』 『単式簿記』 『複式簿記』を理解するための例を示す。
現 金 | |||
---|---|---|---|
?@当初残高 | \30,000 | ?C預金 | \50,000 |
?B給与 | \100,000 | ?D衣服費 | \10,000 |
?E預金 | \10,000 | ||
残 高 | \80,000 | ||
\140,000 | \140,000 |
預 金 | |||
---|---|---|---|
?A当初残高 | \100,000 | ?E現金引下 | \10,000 |
?C現金預入 | \50,000 | ||
残 高 | \140,000 | ||
\150,000 | \150,000 |
このように勘定項目を分けた場合、?Cと?Eは現金・預金の二つの側面で観察されているが、その他の項目は一つの面でしか観察されていない(一度しか出てこない)。
このような単式簿記の場合、財産の正味増減額自体の計算は、勘定から直ちに行うことが出来る。
上記例では、
{(現金残高)+(預金残高)}−{(現金当初残高)+(預金当初残高)}
={(\70,000)+(\140,000)}−{(\30,000)+(\100,000)}
=+\80,000増額
しかし、正味増減額がどのような原因で発生したのか、を知るためには全ての勘定の中から必要な数値を拾い出して集計しなければならない。これは簿記の外で行われるため、集計が複雑になると原因分析が難しくなる。これが単式簿記の致命的欠点である。
現 金 | |||
---|---|---|---|
?@当初残高 | \30,000 | ?C預 金 | \50,000 |
?B給 与 | \100,000 | ?D衣服費 | \10,000 |
?E預 金 | \10,000 | ||
?J残 高 | \80,000 | ||
\140,000 | \140,000 |
預 金 | |||
---|---|---|---|
?A当初残高 | \100,000 | ?E現 金 | \10,000 |
?C現 金 | \50,000 | ||
?K残 高 | \140,000 | ||
\150,000 | \150,000 |
当初残高 | |||
---|---|---|---|
?@現 金 | \30,000 | ||
?A預 金 | \100,000 |
給 与 | |||
---|---|---|---|
?B現 金 | \100,000 |
衣服費 | |||
---|---|---|---|
?D現 金 | \10,000 |
このようにすると、以下の二点の特徴がある。
■全ての事実がある勘定の左側とある勘定の右側の二面に記入されている(複式記入)
■これらの勘定の集計をすることで、財産の正味増減額において同時に二つの自動計算が可能になる。すなわち
◆『現金勘定』と『預金勘定』そして『当初残高勘定』によって在高比較計算が出来る。
◆その他の勘定(『給与勘定』 『衣服費勘定』)によって原因別計算が出来る。
上記二つの計算の結果(正味増加額)は同額である。
以下に、複式簿記実行のための一例を示す。
ちなみに、話はまったくのでたらめです。
参考本を元に、いい加減に調整してあります。
その後、同社は、当期(自2006年4月1日至2007年3月31日)において、以下のような取引を行った。
そして、2007年 3月31日付の決算書を作成した。
以下、上記案件について
◆仕訳
◆元帳への転記
◆決算整理仕訳の実行・決算
を行っていきます。
以下、各取引について、仕訳を行っていく。
chatarou株式会社は、株主の現金500万円を元に2006年 4月1日に設立された。これは、以下のような取引である。 (借方)「資産の増加」 (貸方)「資本の増加」 よって、以下のように仕訳する。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
期首 現金 | \5,000,000 | 期首 資本金 | \5,000,000 |
そして、銀行から3年後に元利(利率年3%)を返済する条件で500万円を借り入れた。これは、以下のような取引である。 (借方)「資産の増加」 (貸方)「負債の増加」 よって、以下のように仕訳する。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
期首 現金 | \5,000,000 | 期首 長期借入金 | \5,000,000 |
2006年 4月1日に、自動車を購入し200万円を現金で支払った。これは、以下のような取引である。 (借方)「資産の増加」(車両資産が増加) (貸方)「資産の減少」(現金資産が減少) よって、以下のように仕訳する。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
1. 車両 | \2,000,000 | 1. 現金 | \2,000,000 |
2006年 4月1日に、商品100万円を仕入れ、代金のうち10万円を現金で支払い、残額は掛とした。これは、以下のような取引である。 (借方)「資産の増加」(商品資産が増加) (貸方)「資産の減少」(現金資産が減少) および「負債の増加」(買掛金が増加) よって、以下のように仕訳する。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
2. 商品 | \1,000,000 | 2. 現金 | \100,000 |
2. 買掛金 | \900,000 |
2006年 5月1日に、手持ち商品のうち50万円を100万円で販売し、代金は掛とした。これは、以下のような取引である。 (借方)「資産の増加」(売掛金が増加) (貸方)「資産の減少」(商品資産が減少) および 「収益の発生」 よって、以下のように仕訳する。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
3. 売掛金 | \1,000,000 | 3. 商品 | \500,000 |
3. 商品販売益 | \500,000 |
2006年 6月1日に、銀行から長期借入金4000万円を借り入れ(利率年3%)、一年間分の利息を前払いし残額を当座預金とした。これは、以下のような取引である。 (借方)「資産の増加」(当座預金が増加) および 「費用の発生」(支払利息の発生) (貸方)「負債の増加」(長期借入金が増加) よって、以下のように仕訳する。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
4. 当座預金 | \38,800,000 | 4. 長期借入金 | \40,000,000 |
4. 支払利息 | \1,200,000 |
2006年 7月1日に、マンションの一室を3000万円で購入し、小切手で支払った。これは、以下のような取引である。 (借方)「資産の増加」(建物が発生) (貸方)「資産の減少」(当座預金が減少) よって、以下のように仕訳する。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
5. 建物 | \30,000,000 | 5. 当座預金 | \30,000,000 |
2006年 8月1日に、売買目的で他社の株式を100万円で購入し、小切手で支払った。これは、以下のような取引である。 (借方)「資産の増加」(有価証券が発生) (貸方)「資産の減少」(当座預金が減少) よって、以下のように仕訳する。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
6. 有価証券 | \1,000,000 | 6. 当座預金 | \1,000,000 |
2006年 9月1日に、商品仕入代金のうち掛としていた内80万円を現金で支払った。これは、以下のような取引である。 (借方)「負債の減少」(買掛金が発生) (貸方)「資産の減少」(現金が減少) よって、以下のように仕訳する。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
7. 買掛金 | \300,000 | 7. 現金 | \300,000 |
2006年10月1日に、従業員の給料100万円と広告宣伝費10万円を現金で支払った。これは、以下のような取引である。 (借方)「費用の発生」(給料が発生、広告宣伝費が発生) (貸方)「資産の減少」(現金が減少) よって、以下のように仕訳する。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
8. 給料 | \1,000,000 | 8. 現金 | \1,100,000 |
8. 広告宣伝費 | \100,000 |
2006年11月1日に、現金が盗難にあい、10万円の損失が発生した。これは、以下のような取引である。 (借方)「損失の発生」(東南損失が発生) (貸方)「資産の減少」(現金が減少) よって、以下のように仕訳する。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
9. 盗難損失 | \100,000 | 9. 現金 | \100,000 |
2007年 2月1日に、株式の配当金5万円を現金で受け取った。これは、以下のような取引である。 (借方)「資産の増加」(現金が増加) (貸方)「収益の発生」(受取配当金の発生) よって、以下のように仕訳する。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
10. 現金 | \50,000 | 10. 受取配当金 | \50,000 |
企業の全ての取引は、以下の5つの項目に集約される。
『資産』 『負債』 『資本』 『収益』 『費用』
仕訳を行う際には、各取引がこれら五つの項目の中のどれに該当するかを決定する必要がある。
そして、項目を決定した結果、仕訳に記入する歳には、
資産表等式:
資産 + 費用 = 負債 + 資本 + 収益
に基づいて、仕訳帳に以下のように記入を行う。
?@資産が増加した場合は左側に記入する。
?A負債が増加した場合は右側に記入する。
?B資本が増加した場合は右側に記入する。
?C収益が発生した場合は右側に記入する。
?D費用(または損失)が発生した場合は左側に記入する。
これは、言い換えると次のようにも言える。
全ての取引が仕訳の原則により処理されるということは、各取引は、以下の要素の組み合わせ(直積)で処理される。
借方の要素 | 貸方の要素 | |
---|---|---|
?@資産の増加 | × | ?D資産の減少 |
?A負債の減少 | × | ?E負債の増加 |
?B資本の減少 | × | ?F資本の増加 |
?C費用の発生 | × | ?G収益の発生 |
ただし、これら16種類は全て発生する訳ではない。
通常発生するのは、以下の7種類である。
◆?@−?D(資産の増加−資産の減少) ex.) モノを現金で買う
◆?@−?E(資産の増加−負債の増加) ex.) モノを買掛金で買う
◆?@−?G(資産の増加−収益の発生) ex.)
◆?A−?D(負債の減少−資産の減少) ex.)
◆?A−?E(負債の減少−負債の増加) ex.)
◆?C−?D(費用の発生−資産の減少) ex.)
◆?C−?E(費用の発生−負債の増加) ex.)
稀に発生するのは、以下の4種類である。
◆?@−?F(資産の増加−資本の増加) ex.)
◆?A−?F(負債の減少−資本の増加) ex.)
◆?A−?G(負債の減少−収益の発生) ex.)
◆?B−?F(資本の減少−資本の増加) ex.)
以下の5種類の取引は発生しない。
◆?B−?F(資本の減少−資本の増加) ex.)
◆?B−?G(資本の減少−収益の発生) ex.)
◆?C−?F(費用の発生−資本の増加) ex.)
◆?C−?G(費用の発生−収益の発生) ex.)
仕訳においては、取引の内容にふさわしい科目(勘定科目)を使用しなくてはならない。
勘定項目は、長い間の慣行として広く使用されているので、覚えて利用するだけでよい。
以下に主要な勘定項目の一覧を示す。
資産の勘定 | 負債の勘定 | 資本の勘定 |
---|---|---|
|
|
|
費用の勘定 | 収益の勘定 |
---|---|
|
|
毎日発生する取引を仕訳し仕訳帳に記入したら、次に仕訳帳に現れた勘定項目をそれぞれの勘定項目ごとに集計しなければならない。
このような勘定科目を収容した帳簿を元帳又は総勘定元帳という。
また、仕訳帳に記録された事項を元帳の各勘定に移し変える作業を転記という。
以下に、転記を行った元帳を示す。相手勘定が複数あるばあいは諸口と記入する。
現 金 | |||
---|---|---|---|
期首 諸口 | \10,000,000 | 1. 車両 | \2,000,000 |
10. 受取配当金 | \50,000 | 2. 商品 | \100,000 |
7. 買掛金 | \300,000 | ||
8. 諸口 | \1,100,000 | ||
9. 盗難損失 | \100,000 |
資本金 | |||
---|---|---|---|
期首 現金 | \5,000,000 |
長期借入金 | |||
---|---|---|---|
期首 現金 | \5,000,000 | ||
4. 諸口 | \40,000,000 |
車 両 | |||
---|---|---|---|
1. 現金 | \2,000,000 |
商 品 | |||
---|---|---|---|
2. 諸口 | \1,000,000 | 3. 売掛金 | \500,000 |
買掛金 | |||
---|---|---|---|
7. 現金 | \300,000 | 2. 商品 | \900,000 |
売掛金 | |||
---|---|---|---|
3. 諸口 | \1,000,000 |
商品販売益 | |||
---|---|---|---|
3. 売掛金 | \500,000 |
当座預金 | |||
---|---|---|---|
4. 長期借入金 | \38,800,000 | 5. 建物 | \30,000,000 |
6. 有価証券 | \1,000,000 |
支払利息 | |||
---|---|---|---|
4. 長期借入金 | \1,200,000 |
建 物 | |||
---|---|---|---|
5. 当座預金 | \30,000,000 |
有価証券 | |||
---|---|---|---|
6. 当座預金 | \1,000,000 |
給 料 | |||
---|---|---|---|
8. 現金 | \1,000,000 |
広告宣伝費 | |||
---|---|---|---|
8. 現金 | \100,000 |
盗難損失 | |||
---|---|---|---|
9. 現金 | \100,000 |
受取配当金 | |||
---|---|---|---|
10. 現金 | \50,000 |
仕訳帳から元帳への転記が完了すると、一定時点において、試算表(T/B:Trial Balance)を作成する。
以下に今回の例における合計残高試算表を示す。
借方残高 | 借方合計 | 勘定項目 | 貸方合計 | 貸方残高 |
---|---|---|---|---|
\6,450 | \10,050 | 現 金 | \3,600 | |
\7,800 | \38,800 | 当座預金 | \31,000 | |
\1,000 | \1,000 | 売掛金 | ||
\1,000 | \1,000 | 有価証券 | ||
\500 | \1,000 | 商 品 | \500 | |
\30,000 | \30,000 | 建 物 | ||
\2,000 | \2,000 | 車 両 | ||
\300 | 買掛金 | \900 | \600 | |
長期借入金 | \45,000 | \45,000 | ||
資本金 | \5,000 | \5,000 | ||
受取配当金 | \50 | \50 | ||
\1,000 | \1,000 | 給 料 | ||
\100 | \100 | 広告宣伝費 | ||
\1,200 | \1,200 | 支払利息 | ||
\100 | \100 | 盗難損失 | ||
商品販売益 | \500 | \500 | ||
\51,150 | \86,550 | \86,550 | \51,150 |
今まで、分記法を用いて仕訳を行ってきた。すなわち、商品の勘定項目について、商品(資産の勘定)と商品売買益(収益の勘定)を設けて仕訳を行ってきた。
しかし、実際の業務では、売上の度に売り上げた商品の原価と売買益を計算するのは大変面倒である。
そこで、商品の勘定について三分法を用いて仕訳を行い、元帳に転記する手順を示す。
三分法では、勘定科目について、仕入(費用の勘定)・売上(収益の勘定)・繰越商品(資産の勘定)と言う勘定科目を設ける。
これに従って再度仕訳を行うと、以下のようになる。
取引 2. は以下の通りとなる。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
2. 仕入 | \1,000,000 | 2. 現金 | \100,000 |
2. 買掛金 | \900,000 |
取引 3. は以下の通りとなる。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
3. 売掛金 | \1,000,000 | 3. 売上 | \10,00,000 |
これにより、全仕訳は以下の通り転記される。
上記をまとめると、以下のとおりになる。
現 金 | |||
---|---|---|---|
期首 諸口 | \10,000,000 | 1. 車両 | \2,000,000 |
10. 受取配当金 | \50,000 | 2. 仕入 | \100,000 |
7. 買掛金 | \300,000 | ||
8. 諸口 | \1,100,000 | ||
9. 盗難損失 | \100,000 |
資本金 | |||
---|---|---|---|
期首 現金 | \5,000,000 |
長期借入金 | |||
---|---|---|---|
期首 現金 | \5,000,000 | ||
4. 諸口 | \40,000,000 |
車 両 | |||
---|---|---|---|
1. 現金 | \2,000,000 |
買掛金 | |||
---|---|---|---|
7. 現金 | \300,000 | 2. 仕入 | \900,000 |
売掛金 | |||
---|---|---|---|
3. 売上 | \1,000,000 |
仕入 | |||
---|---|---|---|
2. 諸口 | \1,000,000 |
売上 | |||
---|---|---|---|
3. 売掛金 | \1,000,000 |
当座預金 | |||
---|---|---|---|
4. 長期借入金 | \38,800,000 | 5. 建物 | \30,000,000 |
6. 有価証券 | \1,000,000 |
支払利息 | |||
---|---|---|---|
4. 長期借入金 | \1,200,000 |
建 物 | |||
---|---|---|---|
5. 当座預金 | \30,000,000 |
有価証券 | |||
---|---|---|---|
6. 当座預金 | \1,000,000 |
給 料 | |||
---|---|---|---|
8. 現金 | \1,000,000 |
広告宣伝費 | |||
---|---|---|---|
8. 現金 | \100,000 |
盗難損失 | |||
---|---|---|---|
9. 現金 | \100,000 |
受取配当金 | |||
---|---|---|---|
10. 現金 | \50,000 |
さらに、これをもとにした合計残高試算表を示す。
借方残高 | 借方合計 | 勘定項目 | 貸方合計 | 貸方残高 |
---|---|---|---|---|
\6,450 | \10,050 | 現 金 | \3,600 | |
\7,800 | \38,800 | 当座預金 | \31,000 | |
\1,000 | \1,000 | 売掛金 | ||
\1,000 | \1,000 | 有価証券 | ||
\30,000 | \30,000 | 建 物 | ||
\2,000 | \2,000 | 車 両 | ||
\300 | 買掛金 | \900 | \600 | |
長期借入金 | \45,000 | \45,000 | ||
資本金 | \5,000 | \5,000 | ||
売上 | \1,000 | \1,000 | ||
受取配当金 | \50 | \50 | ||
\1,000 | \1,000 | 仕 入 | ||
\1,000 | \1,000 | 給 料 | ||
\100 | \100 | 広告宣伝費 | ||
\1,200 | \1,200 | 支払利息 | ||
\100 | \100 | 盗難損失 | ||
\51,650 | \86,550 | \86,550 | \51,650 |
三分法による売上原価の算出と収益の算出は、決算整理仕訳のところで説明する。
元帳は試算表により記入内容の正確性の検証には役立つ。
しかし、元帳の内容が財政状態や経営成績を表す適正な金額を示していることにはならない。
そこで、事業年度末において、元帳に追加したり修正を加えたりする手続きを決算整理又は決算記入と言う。決算整理も元帳への追加記入であるから、必ず決算日の日付で仕訳帳に記入し、それを元帳に記入すると言う手順で行われる。
決算整理のために必要な仕訳を決算整理仕訳と言う。
決算整理には例えば、以下のような物がある。
以下、基本的な決算整理を示す。
決算を行うにあたって、決算整理前の残高試算表から、損益計算書と貸借対照表を作成する過程を一つの表で表したものを、精算表という。
この目的は、決算手続きの検証や当期の営業成績を早期に知るためのものである。
試算表には、6桁・8桁・10桁など様々な様式のものがあるが、ここでは一番ありふれた8桁精算表を用いる。
以下に、現時点での精算表を示す。
勘定科目 | 試算表 | 修正記入 | 損益計算書 | 貸借対照表 | ||||
借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | |
現金 | \6,450 | |||||||
当座預金 | \7,800 | |||||||
売掛金 | \1,000 | |||||||
有価証券 | \1,000 | |||||||
建 物 | \30,000 | |||||||
車 両 | \2,000 | |||||||
買掛金 | \600 | |||||||
長期借入金 | \45,000 | |||||||
資本金 | \5,000 | |||||||
売 上 | \1,000 | |||||||
受取配当金 | \50 | |||||||
仕 入 | \1,000 | |||||||
給 料 | \1,000 | |||||||
広告宣伝費 | \100 | |||||||
支払利息 | \1,200 | |||||||
盗難損失 | \100 | |||||||
\51,650 | \51,650 |
現在は試算表の部分のみ記入されているが、ここに決算仕訳(修正記入)を行うことによって、損益計算書と貸借対照表を作成することが出来る。
商品勘定の三分法では、売上総利益を以下のように算出する。
売上総利益 = 売上高 - 売上原価
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期仕入高 - 期末商品棚卸高
(前期繰越高) (次期繰越高)
売上高は売上帳(又は売上勘定)を元に算出できる。
当期仕入高も仕入帳(又は仕入勘定)を元に算出できる。
期首商品棚卸高は前年の棚卸額だから前年の決算整理時の資料(又は繰越商品勘定)から分かる。
期末商品棚卸高は期末に商品を実地で調べてその有高を計算しなければならない。この手続きを実地棚卸と言い、これによって算定した商品の有高を実地棚卸高と言う。
実地棚卸高が期末商品棚卸高となる。
今まで示して来た例を、商品勘定の3分法に変更すると以下のようになる。
期首における、繰越商品の仕訳は以下の通りとなる。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
期首 仕入 | \0 | 期首 繰越商品 | \0 |
期末における、繰越商品の仕訳は以下の通りとなる。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
期末 繰越商品 | \500,000 | 期首 仕入 | \500,000 |
これらを反映させると、精算表は以下のようになる。
勘定科目 | 試算表 | 修正記入 | 損益計算書 | 貸借対照表 | ||||
借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | |
現金 | \6,450 | |||||||
当座預金 | \7,800 | |||||||
繰越商品 | \500 | |||||||
売掛金 | \1,000 | |||||||
有価証券 | \1,000 | |||||||
建 物 | \30,000 | |||||||
車 両 | \2,000 | |||||||
買掛金 | \600 | |||||||
長期借入金 | \45,000 | |||||||
資本金 | \5,000 | |||||||
売 上 | \1,000 | |||||||
受取配当金 | \50 | |||||||
仕 入 | \1,000 | \500 | ||||||
給 料 | \1,000 | |||||||
広告宣伝費 | \100 | |||||||
支払利息 | \1,200 | |||||||
盗難損失 | \100 | |||||||
\51,650 | \51,650 |
株式のような有価証券の価値は毎日変動する。そこで、売買目的の有価証券は時価で評価しなければならない。
chatarou株式会社には100万円で購入した株があるが、これが期末時点でいくらの時価であるか、を決算に反映させなければならない。
反映方法は、試算表等式(下記)に基づく。
『資産』 + 『費用』 = 『負債』 + 『資本』 + 『収益』
仕訳 | |||
---|---|---|---|
期末 有価証券評価損 | \200,000 | 期末 有価証券 | \200,000 |
仕訳 | |||
---|---|---|---|
期末 有価証券 | \300,000 | 期末 有価証券評価益 | \300,000 |
以上のように表記される。なお、有価証券による損益は損益計算書において営業外収益として記載される。
ここでは、上記のうち利益が出た方の仕訳を実行して、精算表の修正記入を行う。
勘定科目 | 試算表 | 修正記入 | 損益計算書 | 貸借対照表 | ||||
借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | |
現金 | \6,450 | |||||||
当座預金 | \7,800 | |||||||
繰越商品 | \500 | |||||||
売掛金 | \1,000 | |||||||
有価証券 | \1,000 | \300 | ||||||
建 物 | \30,000 | |||||||
車 両 | \2,000 | |||||||
買掛金 | \600 | |||||||
長期借入金 | \45,000 | |||||||
資本金 | \5,000 | |||||||
売 上 | \1,000 | |||||||
受取配当金 | \50 | |||||||
仕 入 | \1,000 | \500 | ||||||
給 料 | \1,000 | |||||||
広告宣伝費 | \100 | |||||||
支払利息 | \1,200 | |||||||
盗難損失 | \100 | |||||||
\51,650 | \51,650 | |||||||
有価証券評価益 | \300 | |||||||
参照:
→受取手形勘定、支払手形勘定
企業は、通常、受取手形や売掛金(両方あわせて売上債権と言う)を有するが、これらの債権が回収できない場合もある。回収できないことを貸倒れと言い、その損失を貸倒損失と言う。
ここで問題になるのは、受取債権が事業年度をまたぐ場合である。
今日の企業会計は期間損益の算定を目的にしている。そのため、事業年度をまたいで貸倒が発生する場合は、受取債権が発生した年度に貸倒損失を計上しなければならない。
ところが、貸倒れは発生した後でなければ分からない。
そこで、掛売りが行われた事業年度において、一定額を推定し貸倒れ損失として計上する。
多くの企業の場合、法人税法で定める規定に従って貸倒見積高を決定し、この金額を貸倒損失ではなく『貸倒引当金繰入額』と言う科目で掛売りが行われた年度の損益計算書の販売費(費用)に計上し、その相手勘定である『貸倒引当金』を将来の経済的負担を表す負債と認識する。ただし、貸倒引当金は、資産項目の一つとして控除形式で表示する。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
期末 貸倒引当金繰入額 | \5,000 | 期末 貸倒引当金 | \5,000 |
上記をくみ入れて、精算表は以下のようになる。
勘定科目 | 試算表 | 修正記入 | 損益計算書 | 貸借対照表 | ||||
借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | |
現金 | \6,450 | |||||||
当座預金 | \7,800 | |||||||
繰越商品 | \500 | |||||||
売掛金 | \1,000 | |||||||
有価証券 | \1,000 | \300 | ||||||
建 物 | \30,000 | |||||||
車 両 | \2,000 | |||||||
買掛金 | \600 | |||||||
貸倒引当金 | \5 | |||||||
長期借入金 | \45,000 | |||||||
資本金 | \5,000 | |||||||
売 上 | \1,000 | |||||||
受取配当金 | \50 | |||||||
仕 入 | \1,000 | \500 | ||||||
給 料 | \1,000 | |||||||
広告宣伝費 | \100 | |||||||
支払利息 | \1,200 | |||||||
盗難損失 | \100 | |||||||
\51,650 | \51,650 | |||||||
有価証券評価益 | \300 | |||||||
貸倒引当金繰入 | \5 | |||||||
固定資産のうち、建物・機械装置・車両・工具器具備品については、年々価値が減少していくので減価償却を計上しなければならない。
減価償却の計上法については、以下のような違いがある。
現在簿記を行っているchatarou株式会社では、以下の通り減価償却を設定しました。
仕訳 | |||
---|---|---|---|
期末 減価償却費 | \940,000 | 期末 建物減価償却累積額 | \900,000 |
期末 車両減価償却累積額 | \40,000 |
勘定科目 | 試算表 | 修正記入 | 損益計算書 | 貸借対照表 | ||||
借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | |
現金 | \6,450 | |||||||
当座預金 | \7,800 | |||||||
繰越商品 | \500 | |||||||
売掛金 | \1,000 | |||||||
有価証券 | \1,000 | \300 | ||||||
建 物 | \30,000 | |||||||
減価償却累積額 | \900 | |||||||
車 両 | \2,000 | |||||||
減価償却累積額 | \40 | |||||||
買掛金 | \600 | |||||||
貸倒引当金 | \5 | |||||||
長期借入金 | \45,000 | |||||||
資本金 | \5,000 | |||||||
売 上 | \1,000 | |||||||
受取配当金 | \50 | |||||||
仕 入 | \1,000 | \500 | ||||||
給 料 | \1,000 | |||||||
広告宣伝費 | \100 | |||||||
支払利息 | \1,200 | |||||||
盗難損失 | \100 | |||||||
\51,650 | \51,650 | |||||||
有価証券評価益 | \300 | |||||||
貸倒引当金繰入 | \5 | |||||||
減価償却費 | \940 | |||||||
以上を持ってchatatou株式会社の決算整理仕訳は終了し、損益計算書と貸借対照表が作成される。
勘定科目 | 試算表 | 修正記入 | 損益計算書 | 貸借対照表 | ||||
借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | 借方 | 貸方 | |
現金 | \6,450 | \6,450 | ||||||
当座預金 | \7,800 | \7,800 | ||||||
繰越商品 | \500 | \500 | ||||||
売掛金 | \1,000 | \1,000 | ||||||
有価証券 | \1,000 | \300 | \1,300 | |||||
建 物 | \30,000 | \30,000 | ||||||
減価償却累積額 | \900 | \900 | ||||||
車 両 | \2,000 | \2,000 | ||||||
減価償却累積額 | \40 | \40 | ||||||
買掛金 | \600 | \600 | ||||||
貸倒引当金 | \5 | \5 | ||||||
長期借入金 | \45,000 | \45,000 | ||||||
資本金 | \5,000 | \5,000 | ||||||
売 上 | \1,000 | \1,000 | ||||||
受取配当金 | \50 | \50 | ||||||
仕 入 | \1,000 | \500 | \500 | |||||
給 料 | \1,000 | \1,000 | ||||||
広告宣伝費 | \100 | \100 | ||||||
支払利息 | \1,200 | \1,200 | ||||||
盗難損失 | \100 | \100 | ||||||
\51,650 | \51,650 | |||||||
有価証券評価益 | \300 | \300 | ||||||
貸倒引当金繰入 | \5 | \5 | ||||||
減価償却費 | \940 | \940 | ||||||
当期純損失 | \2,495 | \2,495 | ||||||
\1,745 | \1,745 | \3,845 | \3,845 | \51,545 | \51,545 |
と言うことで、今期のchatarou株式会社は大きな損失を計上したのでした。
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